世界一周の準備のひとつに『予防接種』がありますね。
日本のように清潔で感染症のリスクの低い国ばかりではないので、色々な国に行く場合、きちんと予防接種を受けておく必要があります。
なかなか高額になるので、躊躇しないわけではないですが、安心・安全に世界一周を達成するには、きちんと予防接種を受けておいた方がいいでしょう。
また、国によっては、入国の際に黄熱病の予防接種を受けた証明書がないと入国できない国もあるので、しっかり予習しておきましょう。
何の病気の予防接種をするべきか
何の病気の予防接種を受けるべきかどうかはどの国・エリアに行くかどうかによっても変わってきますが、世界一周の場合、主に以下の病気の予防接種を検討する必要があります。
黄熱病
原因・症状 | 黄熱ウイルスを持っている蚊にさされることで感染します。 潜伏期間は3~6日程度で、発症すると発熱、頭痛、筋肉痛、嘔吐などの初期症状の後、皮膚や目の白い部分が黄色くなり、鼻などから出血、吐血したりして、重症化すると死に至ることもあります。 |
治療 | 特別な治療法はなく、解熱などの対症療法のみとなります。 |
致死率 | 特別な治療法はなく、致死率は20~50%と高いです。 |
感染リスクの高い地域 | アフリカ、中南米などの熱帯・亜熱帯地域 |
予防接種 | 一回の接種で10年間有効。 予防接種の有効性はほぼ100%。 |
費用の目安 | 証明書発行手数料込みで約1万円 |
接種をすすめる度 |
★★★★★(絶対受けた方がいい) 致死率が高い危険な病気ですが、予防接種で感染をほぼ100%予防できるので、感染リスクの高い国・地域に行く場合は絶対に受けた方がいいです。 |
ポリオ(急性灰白髄炎)
原因・症状 | ポリオウイルスに感染した食事を食べることによって口から感染し腸の中で増殖します。 またポリオに感染した人の便からさらに他の人に感染します。 ポリオウイルスに感染しても90%以上の人は症状が現れずにそのまま免疫ができます。 しかし、症状が出てしまうと、手や足に麻痺がでてしまい一生麻痺が残ることもあり、呼吸困難から死に至ることもあります。 |
治療 | 麻痺がでてしまった場合、特別な治療法はありません。 麻痺に対するリハビリテーションを行います。 |
致死率 | 麻痺が起きてしまった場合の致死率は子供で2~5%、大人で15~30%です。 |
感染リスクの高い地域 | アフガニスタン、ナイジェリア、パキスタンがポリオの流行国となっています。 またその周辺国(赤道ギニア、エチオピア、イラク、イスラエル、ソマリア、カメルーン、シリア)などでもポリオが発生しています。 |
予防接種 | 1回。 子供のときにポリオの予防接種をしている人がほとんどですが、免疫が弱くなっている可能性があるので、感染リスクの高い国に行く場合は追加接種をしておいた方がいいでしょう。 |
費用の目安 | 1万円前後 |
接種をすすめる度 | ★★★☆☆(感染リスクの高い国へ行くなら) |
日本脳炎
原因・症状 | 日本脳炎ウイルスを媒介する蚊に刺されることによって感染します。 蚊に刺されても発症率は低く、多くの人は何も症状が出ませんが、0.1~1%の人が発症します。 発症すると、6~16日間の潜伏期間の後、高熱、頭痛、嘔吐などの初期症状が現れます。 その後、重症化すると、意識障害、けいれん、異常行動、筋肉の硬直などが現れ、半数の人が死に至ります。 亡くならなかった場合でも、多くの人に精神障害や運動障害などの後遺症を残ります。 |
治療 | 特別な治療法はなく、解熱などの対症療法のみとなります。 |
致死率 | 発症した方の致死率は50%です。 |
感染リスクの高い地域 | 日本、韓国、中国、ベトナム、タイ、カンボジア、マレーシア、ラオス、ミャンマー、フィリピン、インドネシア、ネパール、バングラデシュ、インド、スリランカ、パプアニューギニア、台湾、ブルネイ、パキスタン、シンガポール、米領グアム、米領サイパン、オーストラリア(クイーンズランド州北部)、ロシア(極東部) |
予防接種 | 1回で3~4年有効。 日本では子供のときに予防接種を受けているはずですが、感染リスクの高い国へ行く場合は追加で受けた方がいいです。 |
費用の目安 | 6000円前後 |
接種をすすめる度 | ★★★★☆(感染リスクの高い国へ行くなら) |
A型肝炎
原因・症状 | 生水、氷、生肉、生野菜、生肉、生の魚介類など加熱調理していないウイルスに汚染された食材を食べることで感染します。 潜伏期間は、15~50日(平均28日)で、急な発熱、全身のだるさ、食欲不振、吐き気や嘔吐などの初期症状が出てきて、黄疸も出てきます。 重症化すると死に至ることもあります。 |
治療 | 特別な治療法はなく、解熱や栄養補給などの対症療法のみとなります。 |
致死率 | 致死率は低く2~4%となっています。 |
感染リスクの高い地域 | 基本的に衛生状態が悪く、飲用水の質が悪い地域で発生するので、日本、北米、オーストラリア、ニュージーランド、ヨーロッパの先進国を除いたほぼすべての途上国で感染リスクがあります。 |
予防接種 | 期間を空けて、計3回の接種で約5年有効 |
費用の目安 | 1回7000円前後 |
接種をすすめる度 |
★★★★★(絶対受けた方がいい) 致死率は低いですが、感染度は高いので必ず受けた方がいいです。 |
B型肝炎
原因・症状 | 感染患者との性行為(唾液や体液の接触)、血液の接触(注射器の使い回し等)などによって人から人に感染します。 潜伏期間は90~150日ほどで、倦怠感、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛、黄疸などの症状ができます。 一部の人で慢性化する場合があり、慢性化してしまうと肝硬変や肝がんなどのリスクがあります。 |
治療 | 基本的に対症療法のみとなりますが、慢性化した場合は、抗ウイルス薬などの治療を行います。 |
致死率 | B型肝炎自体での致死率は1%程度と低いですが、10~20%の確率で慢性化し、肝がんへ進行してしまいます。 肝がんの致死率はきわめて高く、5年生存率は20%程度となっています。 |
感染リスクの高い地域 | 人から感染するため、日本を含め世界中どこでも感染リスクはあります。ただし、感染ルートが感染患者との性行為など、基本的に自身の注意で防げる確率も高いです。 |
予防接種 | 計3回接種で5~20年有効(ワクチンにより異なる) 3回接種完了までに必要な期間は6ヶ月です。 A型・B型の混合ワクチンがあるのでおすすめです。 |
費用の目安 | 1回7000円前後 |
接種をすすめる度 |
★★★☆☆(必要なら) 自身の注意で高い確率で感染を防ぐことができる病気ではありますが、長い世界一周旅行中にどんなアバンチュールがあるかもしれん!ムッフー!という場合は受けておいた方がいいでしょう。 万が一、感染した場合は高い確率で肝硬変や肝がんへ移行する怖い病気なので。 |
狂犬病
原因・症状 |
狂犬病ウイルスに感染している動物にかまれたり、傷口・目や口などの粘膜を舐められたりすることで感染します。 潜伏期間は1~3ヶ月ほど(1週間程度や1年以上の方など幅がある。)で、発症すると発熱、頭痛、全身倦怠や嘔吐などの初期症状の後、筋肉の緊張、幻覚、けいれん、ものを飲み込みづらいなどの症状が起こり、水を怖がるようになり(恐水症)、やがて昏睡状態に陥り死に至ります。 |
治療 | 発症してしまってからの治療法はありません。 発症する前に、数回、狂犬病ワクチンを接種することで発症を防ぐことができます。 |
致死率 | 発症してしまうと治療法はなく、致死率はほぼ100%です。 |
感染リスクの高い地域 | アジア・アフリカ・中南米・中東など ※基本的に、ヨーロッパの先進国、日本、オーストラリア、ニュージーランド、北米以外は感染リスクが高いと思っていいです。 |
予防接種 |
計3回の予防接種で約2年間有効。 ただし、万が一、狂犬病感染の可能性がある動物にかまれるなどした場合、予防接種をしていても、していなくても、発症を防ぐためのワクチン接種が数回必須となります。 |
費用の目安 | 1回15000円程度を計3回 |
接種をすすめる度 |
★★★★☆(できれば受けた方がいい) ある程度は不用意に動物に近づかないようにするなど自分で対策も可能ですし、予防接種を受けていたとしても万が一動物にかまれた場合には発症を防ぐためのワクチン接種が必須となるなど、あまり予防接種に大きなメリットがない。さらに狂犬病の予防接種は費用も高い。 ただし、致死率が100%と発症してしまうと確実に死に至る感染症であることと、途上国の場合、すぐにワクチンを複数回分用意している医療機関にアクセスできるかどうか不明のため、できるだけリスクを下げるために予防接種を受けておいた方が無難。 |
破傷風
原因・症状 | 破傷風菌は全世界の土壌のなかに存在しており、傷口から土をを通じて感染します。 潜伏期間は3日~3週間ほどで、その後、口を開けにくくなったり、舌がもつれたりといった初期症状が現れ、 病状が進行すると、激しい痛みやけいれんが全身にひろがり、体を弓なりに反らせる姿勢となり、呼吸困難を起こし死に至ります。 |
治療 | 医療機関での血清や抗菌剤の投与が必須です。 |
致死率 | 約30~40% |
感染リスクの高い地域 | 世界中どこでも |
予防接種 | 日本では小児期に3種混合ワクチン(ジフテリア・百日せき・破傷風)を受けているはず。 ワクチンの持続期間は約10年で、小児期に3種混合ワクチンを接種していれば、追加接種1回で、以後10年ワクチンの効果が持続します。 ただし、50歳以上の方は3種混合ワクチンを接種していない可能性がありますし、50歳以下の方でも、接種が中断された期間もあるので、自分が3種混合ワクチンを接種しているかどうか母子手帳等で確認した方がいいです。 |
費用の目安 | 3000円前後 |
接種をすすめる度 | ★★★★★(絶対受けた方がいい)
致死率が高く、世界中どこの国でも感染リスクが高いことから接種は必須。 |
麻しん(はしか)
原因・症状 | 感染力が非常に強く、感染患者と同じ部屋にいるだけで空気感染することもあります。
潜伏期間は10~12日ほどで、高熱、咳、鼻水、口の中に小さな(約1mm)白い発疹ができます。 |
治療 | 基本的に対処療法のみとなります。合併症を併発してしまった場合は、抗菌剤を投与するなどの治療が行われます。 |
致死率 | 日本などの先進国では致死率は非常に低く0.1~0.2%ですが、途上国では1~5%となっています。 さらに栄養状態が悪い、医療機関へのアクセスが悪い地域では15%以上になるという調査あり、非常に怖い病気です。 |
感染リスクの高い地域 | 世界中どこでも |
予防接種 | 計2回の接種で15年ほど有効です。 子供のときに予防接種を受けていたり、麻疹に過去かかったことがある場合は免疫があるので不要です。 |
費用の目安 | 1回6000円前後 |
接種をすすめる度 |
★★★★★(絶対受けた方がいい) 日本は医療が発達しているので、万が一感染してもほぼ大丈夫ですが、医療の整っていない途上国で感染してしまった場合は重症化する恐れがあります。 |
髄膜炎
原因・症状 |
感染患者の咳やくしゃみによる唾液から感染します。 潜伏期間は1~14日ほどで、頭痛、発熱、吐き気、嘔吐を起こし、錯乱したり、光を嫌がったりといった精神状態への症状も起こります。 |
治療 | 抗生物質による治療が可能です。 早期に治療を開始することが重要です。 |
致死率 | 発症した場合、早期に適切な治療を行わないと致死率はほぼ100%です。 |
感染リスクの高い地域 | 主にアフリカ中央部の髄膜炎ベルトと呼ばれるサハラ砂漠以南の地域で感染リスクが高いです。 その他中近東でも発生しています。 |
予防接種 | 1回の接種で4~5年有効です。 ただし、日本では認可されているワクチンがないため輸入ワクチンとなり、値段が高めです。 |
費用の目安 | 12000円程度 |
接種をすすめる度 |
★★★☆☆(髄膜炎ベルトの国へ行くなら) 髄膜炎ベルトの国(ブルキナファソ、ガーナ、トーゴ、ベニン、ニジェール、ナイジェリア、チャド、カメルーン、中央アフリカ共和国、スーダン、エチオピア、マリ、ギニア、セネガル、ガンビア)などに行く予定がある場合は、受けておいた方が安心です。 万が一、感染しても早期に適切な治療を行えば治癒できる病気ですが、これらの国で早期に適切な治療を受けられるかどうかが分かりませんので。 |
腸チフス
原因・症状 | 水、氷、食べものから感染します。潜伏期間は1~3週間ほどで、高熱、頭痛、倦怠感、発疹、便秘などの初期症状が現れます。 重症化すると、腸から出血したり、腸に穴が空いたりして死に至る場合もあります。 |
治療 | 抗生物質による治療が可能です。 |
致死率 | 日本などの医療の整った先進国では早期に適切な治療が行われるため致死率が低いですが、途上国などでは5%程度になります。 |
感染リスクの高い地域 | 基本的に世界中に存在しますが、特に東南アジア、アフリカ、カリブ海、中央および南アメリカでリスクが高いです。 |
予防接種 | 1回接種で約3年有効です。 |
費用の目安 | 10000円程度 |
接種をすすめる度 | ★★★☆☆(予算に余裕があるなら) |
以上の他、予算・時間に余裕があれば、ツベルクリン(結核)、インフルエンザなんかも検討してもよいと思います。
結局、予防接種も保険みたいなもので、手厚くしようと思えばキリがないですし、まったく予防接種をしないで無事に帰ってくる猛者もいますし、どれだけ予防接種をしていっても、予防接種の存在しないマラリアやデング熱にかかってしまう可能性もあるわけで。。。
ここらへんはリスクとかけられる予算の兼ね合いですね^^;
僕はできるだけお金をかけてでもリスクを最小限にしたい派だったので、ここに書いた予防接種を黄熱病以外、全部受けました。(ツベルクリン、インフルエンザも含めて)
これだけ全部受けて、1人14万円程度かかりました。
とりあえず最低限受けるべきは、A型肝炎、破傷風、狂犬病の3つです。
もしイエローカードの必要な国に行く場合は、この3つにプラス黄熱病ですね。
もし予算がどうしても足りないという場合は、最悪、狂犬病を外していいかもです。このなかで一番高く付くので。
どこで予防接種を受けられるのか
予防接種は事前にすべて日本で受けていくこともできますし、世界一周の途中に海外へ受けることもできます。
日本で受ける場合、検疫所で受ける方法と、トラベルクリニックや旅行外来・渡航外来のある一般の病院・クリニックで受ける方法があります。
どちらでも、行く予定の国などからどの病気の予防接種を受けた方がいいかなどの相談・アドバイスや接種していくスケジュールの作成などもしてくれます。
近隣で予防接種を受けられる検疫所を調べるには、以下の厚生労働省検疫所のホームページが便利です。
検疫所電話相談機関一覧
海外渡航者向けワクチン接種検疫所リスト
予防接種実施機関検索データーベース
トラベルクリニックや旅行外来・渡航外来のある一般の病院・クリニックを探すなら以下のページが便利です。
日本渡航医学会に加盟しているトラベルクリニック一覧
また、世界一周中に海外で予防接種を受けるという手もあります。
日本より物価の安い国で受ければ日本で受けるよりも割安になることもありますし、トルコ・アルゼンチンなど国によっては黄熱病の予防接種は無料で実施している国もあるので、ぜひ海外での接種も計画に組み入れたいところです。
僕はタイ バンコクのサミティヴェート病院で予防接種を受けました。
日本語対応で日本人専用の受付があり、お医者さんも日本語を話してくれますので言葉の心配は不要です。
ホテルみたいな豪華な内装で、ピアノの生演奏があったりする豪華な病院です。
それでいて日本で受けるよりも安く受けることができるのでおすすめです。
ただし、下記のスケジュールの項目にも書いたように、予防接種には最低でも3ヶ月、余裕を持って1年程度の期間が必要なので、全部をタイで受けるのは無理です。
日本である程度受けていって、残りをタイで受けるというようなプランにしましょう。
(ただし狂犬病に関しては、残り1回だけを違う病院で受けるということはできないので注意しましょう。)
予防接種のスケジュールには1年くらい余裕を持っておこう
予防接種は基本的にまとめ打ちが可能なので、短期間でどんどん色々な予防接種を打っていくことも可能ですが、黄熱病ワクチンのように生ワクチンといって、接種後1ヶ月間は他の予防接種を受けることができないという予防接種もあります。
また狂犬病のように、複数回受ける予防接種には、1回打った後、次は6ヶ月後に打つというものもあります。
ですので、余裕を持って予防接種を受けるには1年くらい前から接種を開始することが必要です。
僕が予防接種を受け始めたのは、世界一周出発の3ヶ月前からだったので、1週間おきくらいに、1日平均3本打つ(右腕・左腕・おしり)という鬼スケジュールでした^^;
ひどいときには、右腕・左腕・右お尻、左お尻の4本打たれたこともありました。
それでも間に合わない予防接種もあり、残りはタイのバンコクで受けました。
こんなことにならないように、検疫所でもトラベルクリニックでも渡航外来でも、行く国に合わせた必要な予防接種の相談と、接種スケジュールの作成を行ってくれるので、早めに相談に訪れ、余裕を持って、予防接種をするようにしましょう!
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